騎士道、または白い恐怖(オスカー様救済バージョン)


 呆然と立ちつくすオスカーに、夢の守護聖の容赦ない言葉が浴びせられる。

「ったくもう、赤毛に白髪なんて、紅白なますか海老せんべいみたいじゃないか。あーあ、いい男も台無しだねえ」

 (海老せんべい……)




 集いが終わり、オスカーはジュリアスと共に執務室に戻った。ふと見ると、磨き上げられた鏡板に、己の姿がくっきりと映っている。

 悲しい気持ちで、つい前髪に触れようとした手を、誰かがそっと押さえた。

「あっ……ジュリアス様」

「そなた、最近は不摂生などしてはいないではないか」

「……はい」

 その通り、近頃は執務が忙しくて、夜遊びどころではなかったのだ。それでも昨日まで、髪に異常はなかった。この白髪は、だから一重に、今日一日の気苦労によるものだった。

 そんな思考を読んでか読まずか、光の守護聖は真面目な表情で、

「そうか。私が……苦労をかけているのだな」

と言い、労る様にオスカーの前髪に触れる。

 そして、目を見張るオスカーに向かって柔らかく微笑むと、告げた。

「そなたには、いつも助けられている。感謝しているぞ」

「ジュリアス様……」

 胸が一杯で、それ以上言葉も出ず、オスカーはただ、深く深く敬礼した。

(俺はいつまでも、いつまでも付いていきます!たとえ、海老せんべいが、塩せんべいになろうともっ!!!)



 炎のオスカー、22歳。“主君”のためならば、我が身の老化も厭わない男。
終わり
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