若きランディの悩み


 初めて引き合わせられた時から、ランディのセイランに対する態度は、どこかぎこちなかった。

 そういう人物なのかと思い、初めは気にも留めなかったセイランだが、彼が他の者にはごく自然体で接しているのを見ると、自分だけが悪い意味で特別扱いを受けているとしか思えない。

 それが好悪から発したものならばよくある話だが、嫌われているという感じもしないので余計に訳が分からず、セイランとしては非常にストレスの溜まる状態なのだ。




 ついにある日、彼はランディの執務室に出向いてこう切り出した。

「僕に何か言いたい事があるなら、はっきり言ってほしいですね」

「セ……セイランさん!」

 風の守護聖は、いつもの爽やかな笑顔はどこへやら、何か後ろめたい事でもあるかの様に視線をさまよわせている。

「おやおや、勇気を司る方がそんな調子では、この宇宙もおしまいかな」

「そんな!……分かった、言いますよ」

 ランディは大きく深呼吸すると、強ばった声でこう言い出した。

「聞きたい事があるんです。セイランさんって、女王候補たちには、その……どんな風に教えてるんですか」

 藍色の髪の芸術家は、呆れた様に相手の顔を見つめた。

「何を聞かれるかと思えば、そんな事……いいでしょう、お答えしますよ。と言ってもただ、彼女たちの心に響くような詩を読ませたり、音楽を聞かせたり、画集を見せたりして感想を話し合っているだけですけど」

「……それだけ?」

 明らかに拍子抜けした表情で聞き返されたので、セイランはむっとして答えた。

「勿論僕だって、これが最高の方法だなんて思っちゃいない。でも限られた時間で、しかもあの部屋の中で、と制限を付けられたら……」

「あ、いやその、すみません。別にケチをつけるつもりじゃなくって、ただ、どうやっているのかが知りたかっただけなんです」

 ランディは、慌てて頭を下げる。

 「そう」セイランの声には、まだ少し不機嫌が残っていた。

「だったら一度、女王候補たちと一緒に学習しにいらしたらどうですか。ランディ様にももう少し資質があった方が良さそうだし」

「なっ……なっ……」

 顔を真っ赤にしたランディが叫ぶ。

「何で俺が、セイランさんに習わなきゃならないんですか、 性感をっっ!!」

ちゃんちゃん
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