頑丈そうな体つきの店主に勝てるかどうかは分かりませんが、腕ずくでも取り戻すしかないと、覚悟を決めて拳を握ったあなたに、後ろから声を掛けてきた人がいます。 「そんな構えをして、まさか力ずくで取り戻す気か? まったく勇ましいお嬢ちゃんだな」 振り返ると、燃え上がるような赤い髪と精悍な顔立ちをした長身の青年が、こちらに近づいてくるところです。 「おい、そこの露天商。俺はさっきから見ていたんだが、そのスイカは、確かにこのお嬢ちゃんが抱えてきたものだぜ。早く謝って返してやるんだな」 「こ、これは……はい、もちろんでございます。勘違いいたしまして、真に申し訳ございませんでした」 店主は急に態度を変えると、土下座せんばかりの勢いで謝りながら、あなたにスイカを返しました。 キツネにつままれたような気分でそれを受け取ったあなたは、青年に礼を言おうと振り返りました。 するとその途端、彼はあなたの顎を指で持ち上げると、息の掛かりそうなほど顔を寄せ、低く甘く囁いてきたのです。 「この聖地に住んでいる女性の顔は全部覚えているが、お嬢ちゃんには見覚えがないな。さては、ここに来たばかりか?……だったら、礼なんかいらないぜ。お嬢ちゃんとの出会いという、ステキな贈り物を得られたんだから」 アイスブルーの瞳で間近に見つめられたあなたは… a. 胸がドキドキして、思わずスイカを取り落としそうになってしまいました。 b. “悪いけど、見かけほどウブじゃないのよね”と、余裕で微笑み返しました。 |
「おっと、大切なスイカが落ちそうだぜ」 青年が力強い腕でスイカを支え、あなたの腕に返してくれます。 「ロザ…補佐官の届け物なら、早くすませた方がいいだろうな。仕事に戻る時間でさえなければ、送っていってやりたい所なんだが…仕方ない。気を付けて行くんだぜ、勇ましくて愛らしい、俺のお嬢ちゃん」 「は…はい」 夢見心地のまま、あなたは立ち去っていく青年を見送ると… 再び「寮」に向かって歩き出しました。 |
余裕で微笑み返しながら、あなたはそっと体を引きました。 「とにかく、助けて下さってありがとうございました。それでは」 と言い残し、あなたは… 振り返りもしないで「寮」に向かいます。 |