DIAMOND FLAME6-1
6.真 実
1.
劇的な襲撃で皇帝の正体が判明し、一行は傷つきながらも女王を救出した。
後は敵自ら明かした本拠地”旧き城跡の惑星”の”虚空の城”に乗り込み、決戦を挑むだけである。
それがどんなに勝ち目の薄い戦いであるかは、一行の皆が悟っていたが、誰一人弱気になる事無く、決戦への指名を待っていた。
メンバーは”旧き城跡の惑星”に到着した直後に発表され、その中にはオスカーとセイランも含まれていた。
惑星の住民は既に全員モンスター化されていたらしく、どの村にも町にも人の姿はまるで見られなかった。
皇帝との戦いを前に、空き家となった家の一軒で夜を過ごす事となった一行から、セイランはいつもより早めに離れた。
決戦の前夜くらい規律を乱すべきではないと見張られる可能性があったし、住民がいないのでは人混みに紛れて身を隠す事もできない。大事を取って、日の暮れる前にそっと家を出ていったのである。
肌寒い気候ではあったが、どの家も壁が厚く、何とか一夜を過ごす事はできそうだ。
セイランは村を囲む針葉樹の森に潜み、一行が寝静まる夜を待った。
宿舎となった家の窓から、最後の明かりが消えた。
冷え込んだ体を伸ばしながら、藍色の髪の若者が、繁みの中から立ち上がる。冴えた光を放つ星々の下、自分が踏む草の乾いた音だけが聞こえる中を、彼は村に向かって歩き出した。
森から最初の家の戸口に立った時、背後に何かの気配がした。
「オスカー!」
振り返った所には、星明かりの下でもはっきり見える赤い髪、鋭い眼光の長身があった。
セイランは反対の方角へ走り出そうとしたが、後ろから抱き留められしまった。
「放せ、放してくれ!」
もがけばもがく程強くなる抱擁の中で、髪に、肩に口付けながら問いかける青年の声が聞こえて来る。
「何故だ、セイラン、何故……」
辛そうな響きに思わず振り向いたセイランは、そのまま唇を奪われた。
離れなければと思う前に力が抜け、気付けば相手の腕に身を凭せかけている。
オスカーは静かに唇を離すと、苦しげな声で言った。
「すまなかった。避けられていたのは知っている。こんな事をされるのも嫌だっただろうが……頼む、教えてくれ、何がいけなかったんだ。君に憎まれる様な何かを、俺がしたのか」
「あなたを……憎む?」
思いがけない言葉に、若者は目を見開いた。
「そんな事が出来たら、どんなに楽だったか!」
今度はオスカーが驚く番だった。
「違うのか、それじゃ一体……」
しかし、伏せられた海碧の瞳も、青ざめて見える唇も、沈黙したままだった。
赤い髪の青年はため息をつくと、ゆっくりとセイランを向き直らせ、真剣な目でこう言い出した。
「いつか話してくれる時まで、無理強いはしないで待つつもりだった。だが、明日戦う相手は皇帝だ。半端じゃない、その上、未知の力を持っている。こんな気持ちで戦って勝てるかどうか、正直言って俺には自信がない……全く、情けない話だぜ」
自信がない?
この人が、強さそのものの、どんなに自信を持っても過ぎる事のない炎のオスカーが、自信がないと言っている?
見た目にもはっきりと分かるほど、セイランは動揺していた。
決して言うまいと思っていた真実。でも、言わなければオスカーの命が危険に曝されるのだとしたら……
しばしの葛藤の後、若者は意を決した。